「モノの価値、再発見マガジン」編集長の結城です。
あなたは、なぜその製品を選んだのですか?
デザイン、性能、価格、ブランド。理由は様々でしょう。しかし、その製品の「1年後の価値」について考えたことはありますか?
2024年に標準化が完了した新規格「Wi-Fi 7」。その圧倒的なスペックに心惹かれ、そろそろ対応ルーターへの買い替えを検討している方も多いのではないでしょうか。しかし、市場には様々な製品が溢れ、「一体どれを選べば良いのか」「今買うのは本当に賢い選択なのか」と、その一歩を踏み出せずにいるかもしれません。
このマガジンは、ただのレビューサイトではありません。我々は、製品を分解し、市場を分析し、テクノロジーの未来を予測することで、その製品が持つ「時間を含めた本当の価値」を明らかにします。
この記事では、2026年1月現在、市場に存在するWi-Fi 7対応ルーターの中から、性能、設計思想、そして将来価値という3つの軸で厳選した5つのモデルを徹底比較。さらに、この記事の核心である「1年後の買取価格」を、過去の市場データと技術トレンドから大胆に予測します。
目次
そもそもWi-Fi 7とは?Wi-Fi 6/6Eとの決定的な違い
まず、我々がこれから評価する「Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)」が、これまでの規格と何が違うのかを正確に理解しておく必要があります。スペックシートの数字だけを見ていては、本質は見えません。Wi-Fi 7は、単なる高速化ではなく、通信の「質」を根本から変える技術です。
3つの主要な進化点:MLO、4K QAM、320MHz幅
Wi-Fi 7の進化を支える技術は多岐にわたりますが、ユーザー体験に直結する重要なポイントは以下の3つに集約されます。
| 技術要素 | Wi-Fi 6/6E | Wi-Fi 7 | 概要と効果 |
|---|---|---|---|
| チャンネル幅 | 最大160MHz | 最大320MHz | 通信の通り道(車線)が2倍に。一度に送れるデータ量が増え、速度が劇的に向上する。 |
| 変調方式 | 1024 QAM | 4096 QAM (4K QAM) | データを電波に乗せる密度が向上。一度に運べる情報量が1.2倍になり、効率的なデータ伝送が可能に。 |
| 複数帯域利用 | シングルリンク | MLO (Multi-Link Operation) | 2.4GHz、5GHz、6GHzといった複数の周波数帯を束ねて同時に通信。安定性が増し、遅延が大幅に減少する。 |
これで何が変わる?体感できるメリットを分かりやすく解説
これらの技術革新は、我々のデジタルライフに具体的にどのような変化をもたらすのでしょうか。
- オンラインゲームやWeb会議がより快適に: MLO技術により、通信の安定性が飛躍的に向上。一瞬のラグが命取りになるゲームや、映像・音声の途切れが許されないWeb会議で絶大な効果を発揮します。
- 8K動画も余裕のストリーミング: 320MHzの広帯域幅は、8Kのような超高精細動画のストリーミングもスムーズにします。家族全員が同時に高画質動画を視聴しても、もはやカクつくことはないでしょう。
- スマートホーム機器の多数同時接続でも安定: Wi-Fiに接続するデバイスが増え続ける現代の家庭において、多数の機器が同時に通信しても速度が落ちにくくなります。
理論上の最大通信速度は、Wi-Fi 6/6Eの9.6Gbpsに対し、Wi-Fi 7では46Gbpsと約4.8倍に達します。もちろんこれは理論値ですが、規格としてのポテンシャルが桁違いに進化したことは間違いありません。
2026年現在の普及状況と今後の展望
2026年1月現在、スマートフォンやPCでもWi-Fi 7対応機種が増えつつあり、その真価を発揮できる環境が整い始めています。まだ過渡期ではあるものの、10Gbpsの光回線サービスも普及が進んでおり、インフラ側もWi-Fi 7を迎える準備は万端と言えるでしょう。今後2~3年で、Wi-Fi 7は家庭内ネットワークの主役となることが確実視されています。
【2026年最新】Wi-Fi 7対応おすすめルーター5選 徹底比較
それでは、いよいよ本題です。数あるWi-Fi 7対応ルーターの中から、「モノの価値、再発見マガジン」が厳選した5つのモデルを紹介します。単なるスペック比較だけでなく、設計思想や将来性まで踏み込んで分析します。
選定基準:性能・価格・将来価値の3つの軸
今回の選定にあたり、我々は以下の3つの基準を設けました。
- 基本性能の高さ: Wi-Fi 7の主要技術(トライバンド、MLO、10Gbps対応ポートなど)を確実に押さえ、実効速度と安定性に優れていること。
- コストパフォーマンス: 初期投資に見合うだけの価値を提供できるか。単に安価なだけでなく、長期的な視点での満足度。
- 将来価値(リセールバリュー): 1年後、中古市場でどの程度の価値を維持できるか。ブランド力、設計の先進性、市場での需要を考慮。
1. NEC Aterm 19000T12BE:国内設計の信頼性と安定感
- 特徴: 国内開発・設計・生産を謳う、信頼性の高いモデル。12ストリーム通信で最大18,669Mbpsの高速通信を実現し、10GbpsのWAN/LANポートも搭載。
- 設計思想: 派手さよりも、日々の安定稼働を最優先する思想が伺えます。セキュリティ適合制度「JC-STAR」の認証を取得している点も、家庭で安心して利用するための配慮でしょう。
- 良い点:
- 安定した通信品質と国内メーカーならではの安心感。
- メッシュ中継機能により、家中の通信エリアを柔軟に拡大可能。
- 懸念点:
- 海外メーカーの同等スペック機と比較すると、デザインの斬新さやゲーミング向け機能は控えめ。
2. TP-Link Deco BE85/BE68:デザインと性能を両立するメッシュWi-Fiの雄
- 特徴: メッシュWi-Fiシステムで高い評価を得るTP-Linkのハイエンドモデル。複数のユニットで家全体をカバーする思想に、Wi-Fi 7のパワーが加わりました。10Gbpsポートも搭載。
- 設計思想: 「家のどこにいても最高の接続体験を」という明確なコンセプト。Wi-Fi 7のMLO技術を有線・無線のバックホール(ユニット間通信)にも活用し、メッシュシステムの弱点であった速度低下を克服しようという意欲作です。
- 良い点:
- 洗練されたデザインで、インテリアに馴染みやすい。
- メッシュシステムによる死角のないエリアカバー能力。
- 懸念点:
- 最高のパフォーマンスを得るには複数台の購入が前提となり、初期投資が高額になりがち。
3. ASUS ROG Rapture GT-BE98 / TUF Gaming BE9400:ゲーマーのための究極兵器
- 特徴: ゲーミングデバイスで絶大な支持を得るASUSのフラッグシップモデル。クアッドバンド(GT-BE98)やトライバンド(TUF-BE9400)に対応し、ゲーム通信を最優先する多彩な専用機能を搭載。
- 設計思想: 「勝利のための1ミリ秒を削り出す」という、ゲーマーの要求に特化した設計。ネットワークの安定性や低遅延をとことん追求する姿勢は、もはや芸術の域です。デュアル10Gポートやクアッド2.5Gポートなど、有線接続にも一切の妥協がありません。
- 良い点:
- ゲームに最適化された豊富な独自機能(ゲーミングポート、OpenNATなど)。
- トレンドマイクロの技術を採用した高度なセキュリティ機能「AiProtection」。
- 懸念点:
- 非常に高価。その性能をフルに活かせるユーザーは限られる。
- 本体サイズが大きく、設置場所を選ぶ。
4. NETGEAR Orbi 970シリーズ:超弩級の性能を誇るメッシュの王様
- 特徴: NETGEARが誇る最高峰メッシュシステム。Wi-Fi 7のクアッドバンドに対応し、ルーターとサテライト間のバックホール通信に専用の帯域を割り当てることで、圧倒的な安定性を実現。
- 設計思想: 「コストは度外視し、現時点で考えうる最高の部材と技術を投入する」という、フラッグシップならではの哲学。最大27Gbpsという驚異的な合計スループットは、その象徴です。
- 良い点:
- 専用バックホールによる、有線に匹敵するほどの安定したメッシュ通信。
- ルーター、サテライト共に10Gbps/2.5Gbpsポートを複数備え、拡張性が非常に高い。
- 懸念点:
- 価格が群を抜いて高い。個人で購入するには相当な覚悟が必要。
- 2023年9月に米国で発売されたモデルであり、日本での正式発売とサポート体制が要確認。
5. バッファロー AirStation WXR9300BE6P:堅実な進化を遂げた国産ハイエンド
- 特徴: 日本の家庭環境を熟知したバッファローのWi-Fi 7対応モデル。独自の干渉波回避機能や、設置場所に合わせて最適化できる3軸回転アンテナなど、実用的な機能を搭載。
- 設計思想: 日本の住宅事情や利用シーンに寄り添った、ユーザー本位の設計。電子レンジなどのノイズを自動で回避する機能は、その好例です。「Wi-Fi EasyMesh」にも対応し、手軽にメッシュ環境を構築できます。
- 良い点:
- 日本の利用環境に合わせた細やかな機能。
- 10Gbps対応ポートを搭載し、将来の高速回線にも対応。
- 懸念点:
- グローバルモデルと比較すると、最大スペック値では一歩譲る部分もある。
性能比較一覧表
| モデル名 | バンド数 | 最大速度 (理論値) | 有線ポート (WAN/LAN) | メッシュ対応 | 特徴 | 想定価格帯 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| NEC Aterm 19000T12BE | トライバンド | 18,669Mbps | 10G/10G | ◯ | 国産の信頼性、安定性重視 | 中〜高 |
| TP-Link Deco BE68 | トライバンド | 14,000Mbps | 10G/2.5G | ◎ (専用) | デザイン性、簡単メッシュ | 中〜高 |
| ASUS TUF Gaming BE9400 | トライバンド | 9,400Mbps | 2.5G/2.5G | ◯ (AiMesh) | ゲーミング特化、高機能 | 高 |
| NETGEAR Orbi 970 | クアッドバンド | 27,000Mbps | 10G/10G | ◎ (専用) | 最高峰スペック、専用バックホール | 超高 |
| バッファロー WXR9300BE6P | トライバンド | 9,300Mbps | 10G/10G | ◯ (EasyMesh) | 国産、実用機能、可動アンテナ | 中〜高 |
1年後の買取価格を大胆予測!リセールバリューの高いルーターはどれだ?
さて、ここからは当マガジン最大の特徴である「未来価値予測」です。1年後、これらのルーターが中古市場でどのように評価されるのかを分析・予測します。
買取価格を左右する3つの要素
Wi-Fiルーターの買取価格は、主に以下の3つの要素で決まります。
- ブランド力と市場での評価: ASUSのゲーミングモデルやNETGEARのハイエンド機のように、特定の分野で強いブランド力を持つ製品は、中古市場でも指名買いされやすく、価格が維持されやすい傾向にあります。
- 技術の陳腐化スピード: Wi-Fi規格は2〜3年で新しい世代が登場する可能性があります。発売時点で技術的にどれだけ先進的か、次の規格が出ても価値が落ちにくい普遍的な機能(10Gbpsポートなど)を持っているかが重要です。
- 付属品の有無と本体の状態: 外箱、説明書、ACアダプターなどの付属品がすべて揃っていることは高価買取の絶対条件です。もちろん、本体に傷や汚れがないことも重要です。
【大胆予測】各モデルの1年後の買取価格シミュレーション
これらの要素と、過去のWi-Fi 6/6Eルーターの価格下落データを基に、各モデルの1年後の買取価格(状態が非常に良い場合)を予測しました。
| モデル名 | 2026年1月 想定実売価格 | 1年後の買取価格予測 | 残価率予測 | 予測の根拠 |
|---|---|---|---|---|
| NEC Aterm 19000T12BE | 60,000円 | 27,000円~33,000円 | 45~55% | 国産メーカーの安定した需要はあるが、新モデル登場による価格下落の影響は受けやすい。堅実な選択肢。 |
| TP-Link Deco BE68 (2-pack) | 72,000円 | 36,000円~43,000円 | 50~60% | メッシュWi-Fiはセットでの需要が高く、デザイン性も評価されるため比較的高値を維持。後継機の登場が鍵。 |
| ASUS TUF Gaming BE9400 | 75,000円 | 45,000円~56,000円 | 60~75% | 最も高い残価率を予測。ゲーミングという強力な付加価値とブランド力で、中古市場でも高い需要を維持する可能性大。 |
| NETGEAR Orbi 970 (2-pack) | 250,000円 | 112,500円~137,500円 | 45~55% | 絶対的な性能は魅力だが、初期投資があまりに高額なため中古市場での買い手が限定される。価格下落率も大きくなるリスク。 |
| バッファロー WXR9300BE6P | 58,000円 | 26,000円~32,000円 | 45~55% | NECと同様、国内での安定した需要が見込める。大きな値崩れはしないが、リセール目的での魅力は限定的。 |
結論として、1年後のリセールバリューという観点で最も有望なのは「ASUS TUF Gaming BE9400」と予測します。ゲーミング用途という明確な強みが、技術の陳腐化スピードを上回り、その価値を維持し続けるでしょう。
今、Wi-Fi 7ルーターは「買い」なのか?結城 慧の最終結論
すべての分析を踏まえ、最後に「今、Wi-Fi 7ルーターを買うべきか」という問いに答えを出しましょう。
こんな人には「買い」:具体的なユーザー像
- 10Gbpsの光回線を契約している、または契約予定の人: 回線のポテンシャルを最大限に引き出すには、Wi-Fi 7は必須です。
- オンラインゲームでコンマ1秒を争うゲーマー: 低遅延と安定性は、何物にも代えがたい価値があります。
- 最新技術への投資を惜しまないアーリーアダプター: 新しい技術がもたらす体験そのものに価値を見出せる人。
- 4K/8K動画のストリーミングや大容量データの送受信を頻繁に行うクリエイター: 時間は有限です。作業効率の向上は、ルーターの価格を上回るリターンを生む可能性があります。
まだ待つべき人:具体的なユーザー像
- 契約している光回線が1Gbps以下の人: ルーターの性能を活かしきれず、オーバースペックになります。
- 接続するデバイス(PC、スマホ)がWi-Fi 6以前にしか対応していない人: Wi-Fi 7の恩恵を直接受けることはできません。
- インターネットの主な用途がWebサイト閲覧やSNS、標準画質の動画視聴である人: Wi-Fi 6/6Eでも十分快適な環境を構築できます。
現時点では、Wi-Fi 7は万人におすすめできるものではありません。しかし、あなたの利用環境や価値観が前者と合致するならば、その投資は間違いなくあなたのデジタルライフを数段上のステージへと引き上げてくれるでしょう。
まとめ
今回は、2026年最新のWi-Fi 7対応ルーター5選を、性能、設計思想、そして1年後の未来価値という多角的な視点から徹底的に分析しました。
- Wi-Fi 7は、MLO、320MHz幅、4K QAMという3つの核心技術により、速度だけでなく通信の安定性と質を劇的に向上させる。
- 国産の安定感を求めるならNECやバッファロー、デザインとメッシュ性能ならTP-Link、究極のゲーミング環境ならASUS、最高峰のスペックを求めるならNETGEARが選択肢となる。
- 1年後のリセールバリューという観点では、強力なブランド力と付加価値を持つ「ASUS」のゲーミングモデルが最も有望と予測する。
スペックは嘘をつかない。しかし、市場はもっと正直だ。真の価値は、その両方を知る者にしか見えない。
この記事が、あなたのモノ選びの「新しい地図」となり、最高の体験と賢い投資に繋がることを願っています。